tに揚げられていた。朝を過ぎた太陽は、屍体の覆いに、キラキラする陽炎《かげろう》を立てていたが、屍体は全身に、紅い斑点が浮上がっていて、法水の眼を、責めるような意味で刺戟してくる。
 彼は、眼前の緑の海はつねに呼吸するとも、この怖ろしい事件には、永久結末がこないと思われた。
 そして、いよいよ決心の臍《ほぞ》をかためてその一日を、単身「|鷹の城《ハビヒツブルグ》」のなかで過すことにした。
 法水は潜望鏡をながめたり、あるいは、潜水服がいくつとなく吊されている一画を調べたりした。
 艙蓋《ハッチ》の下の室《へや》から機関室に行き、それから以前八住が殺された客室に入って行ったが、そうしているのは、ちょうど知られない世界に入ってでもゆくかのようで、妙に気味悪げな不安にかられてくるのだった。ところが、その室を出ようとしたとき、彼はその把手《ノッブ》を握りしめたまま、唖然と立ち尽してしまった。
 いっこうに艙蓋《ハッチ》の音を聴かなかったにもかかわらず、いつのまに鍵が下ろされたものか、その扉《ドア》は、押せども引けども開かないのである。
 すると、突然艇全体を揺《ゆす》り上げるような激動がおこっ
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