ヤに割り込んだから、はしなくその手に触れた、犬射が驚かされてしまった。そして夫人に急を告げるやらの騒響《ざわめき》の間に、悠々と八住を料理してしまったんだ」
と云って、ヴィデに憫れむような眼差を馳せた。
「ああ|偶像の黄昏《ゲッツェン・デムメルング》――僕は貴方を見て、一つの生きた人間の詩を感じましたよ。生命に対する執着・流浪愛憎。ですが男爵、ニイチェの中にこんな言葉がありましたね――時の選択を誤れる死は、怯惰《きょうだ》な死である――と」
「よろしい、僕は誇らしげな死につきましょう」
とヴィデは、彼の眼前――闇中にそそり立っている超人の姿が、かくも高いのに嘆息したが、
「あの悪鬼フォン・エッセンを捕えるか、それとも、自分の人生を修正するかです。僕は今夜一人で、『|鷹の城《ハビヒツブルグ》』の中に入りますよ」
と云い捨てて、この室《へや》を出て行ったが、その足取りは、盲人《めくら》にしてはたしか過ぎると思われるほどだった。
ところがその翌日、早朝乗組員の一人が、背後から心臓を貫かれて、紅《あけ》に染まっているヴィデの屍体を発見した。
法水が赴いた頃には、ヴィデの死体は陸《おか
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