チて、やがてかなりの後に流れ出ました。ところが、その附近には、砕けた検圧計の水銀が飛び散っていた……」
「水銀……」
検事が思わず反問すると、法水は、その魔法のような兇器を明らかにした。
「そうなんだ支倉君、まさにその水銀なんだよ。ところで、潜航艇に使う液体空気の中へ、水銀を漬けておくと、それが飴状になるので、何かの先に丸い槍形を作り付けることができるのだ。そうして、さらに冷却すると、いわゆる水銀槌《マーキュリース・ハムマー》と呼ばれて、銀色をした鋼《はがね》のような硬度に変ってしまう。だから、それが八住の体内で、体温のために軟らかくなるから、当然先端が丸くなって、創道の両端が異なるという、不可解な兇器が聯想されてくるのだ。だが支倉君、君はあの時八住が、どうして悲鳴を上げなかったか、理由を知っているかね」
と云って、検事が再び混乱するのを見て、法水は事務的に説きだしたが、
「いや、悲鳴を上げなかったというよりも、叫んでも聴えなかったと訂正しておこう。やはり、フォン・エッセン別名《エーリアス》ヴィデ氏は、遭難の夜と同じく、間歇跛行症を利用したのだ。その時発作が起ったので、八住と犬射の
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