トしまったかに思われた。が、法水は優しげに首を振り、衣袋《ポケット》から封筒のようなものを取り出した。
 その刹那、ウルリーケの全身からは、感覚がことごとく失せ切って、ただうっとりと、夢見るように法水の朗読を聴き入っていた――その内容というのは、はたして何であったろうか。

 ――そうして守衛長が私を案内して、いくつか数限りない望楼の階段を上って行きました。
 それも、私が英人医師であるからでしょうが、やがて階段が尽きると、廊下の突き当りには美しい室《へや》がありました。
 そして、その中には、見るも異風な姿をした人物が、一人ニョッキリと突っ立っているのでした。その人物は、フォールスタッフの道化面を冠っていて、身長は六|呎《フィート》以上、着衣はやはり、我々と異ならないものを、身につけておりました。
 ところが、腰を見ると、そこには頑丈な鎖輪《ケッテンリング》が結びつけられてあるのです。
 もちろん会話などは、片言《かたこと》一つ語るのを許されません。
 それから、診察を始めたのでしたが、それには、バスチーユの鉄仮面を見た、マルソラン医師が憶い出されたように、やはり最初は、面の唇から突
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