轣A滑り落ちた。
「で、最初にそれが、艇長の発作を死と誤らせました。なぜなら、元来その病は、上肢《て》にも下肢《あし》にも、どちらにも片側だけに起るもので、体温は死温に等しくなり、また、脈は血管硬化のために、触れても感じないというほど、微弱になってしまうのです。
 艇長が、その発作を利用して、死を装ったことは、あの場合すこぶる賢明な策だったでしょうが、そうして跛行《びっこ》を引きつつ発射管室の方に歩んで行ったのを、僕らは、跛行者《びっこ》のシュテッヘと早合点してしまったのです。
 またそうなると、あの暗黒世界の中に、しんしんと光が差し込んでくるのです。
 ふと僕は、その後の艇長に、世にも奇異《ふしぎ》な生活を描き出すことができました。まったく結果だけを見たら、それが、あのまたとない一人三役――ねえ夫人《おくさん》、貴女はたぶん、それを御存知ないのでしょうね」
「いいえ、その病だけは、いかにも真実でも、……現在のテオバルトは違いますわ。あの維納《ウイン》の鉄仮面――ヘルマンスコーゲルの丘に幽閉されている囚人が、実はそうなのでございます」
 とウルリーケは必死に叫んで、内心の秘密を吐き尽し
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