エずるからなんだが、あの時ヴィデの右手には、そっくりその字を読む際と同じ、運動が現われていたのだ。そうすると支倉君、Bim《ビム》([#ムーンの文字「Bim」(fig43656_03.png)入る])の逆を、もしヴィデの真意とすれば、それが Lie《ライ》([#ムーンの文字「Lie」(fig43656_04.png)入る])嘘になるじゃないか。つまり、問わず語らずのうちに、ウルリーケを陥れようとした、邪《よこし》まな心を曝露してしまったのだ」
「なるほど、ウルリーケはフォン・エッセンの妻だったのだ。しかし、艇長のために盲目《めくら》とまでなった事を思えば、おそらくあの夜の毒殺だけでは、飽き足らなかったかもしれんよ」
 と検事は、ようやく判ったような顔で呟いた。
 ヴィデ――その一つの名をようやく捜り当てたいまは、ただ、シュテッヘの上陸を待つのみとなった。
 そして、灯を消した闇の中で、二人は凝《じ》っと神経を磨ぎ澄まし、何か一つでも物音さえあればと待ち構えていたが、そのうち夜の刻みは尽きて、まさに力の罩《こ》もった響が、五つ、時計から発せられたが、その刹那《せつな》、潮鳴りも窓硝子のは
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