しおと》が聴えてきたのです。それは、片手を壁に突きながら、一本の足で歩いているようで……」
 と云いかけたときに、一同は冷たい鉄に触れたような思いがした。
 なぜなら、その跫音は、明白にシュテッヘであって、失踪当時彼は右足を挫《くじ》いていたからである。
 石割もそう云いながら、わなわな顫《ふる》えだして、彼は法水の声する方《かた》に、両手で卓子《テーブル》を捜りながら、躄《いざ》り寄って行くのだった。
「それが、今日耳にしたところでは、シュテッヘという、姿の見えない薄気味悪い男だそうで……。それから、しばらく居眠ったかと思うと、いまその男の行った方角から、今度は普通の足取りで、コトコト戻って来るのを聴きましたが。……それも現《うつつ》の間《ま》で、やがて扉《ドア》が開いて誰やら入って来たのも、暗黒の中で、それと見定めることは出来ませんでした。しかしその時、時計が五時を打って、それだけは、妙に明瞭《はっきり》と覚えていますが……ああ、どうか今夜だけは、貴方がたといっしょに過させていただけませんか……」
 そうして、盲人の訊問は終ったが、岬の夜はだんだんと更《ふ》けていって、おりおり思
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