閧、べからざる現象が起ったではありませんか。そして、今日もまた、同じ艇内で同じ四人が集まった――とすると、そこに何事か起らずにはいないでしょう。しかしそのうち一人が欠けて、吾々はようやく正常な世界に戻ることができたのです……」
 となおもヴィデが、奇異《ふしぎ》な比喩めいた言葉を云いつづけようとした時、一人の私服が、詳細な屍体検案書を手に入って来た。
 ところが、それによって、この事件の謎がさらに深められるに至った。
 と云うのは、上行大動脈に達している創底《そうてい》を調べると、そこには毫《ごう》も、兇器の先で印された創痕《きずあと》がないばかりでなく、かえってその血管を、押し潰していることが判ったからだ。
 すなわち、瞬間に血行を止めた即死の原因は、それで判るにしても、だいたい頭の円い乳棒のようなもので、皮膚を刺し貫く――というような、神業《かみわざ》めいた兇器が、はたして現実あり得るものだろうか。
 そうして、しばらく二人は、顔を見合わせて黙っていたが、ヴィデはその後も、不可解な言葉を吐きつづけた。
「ねえ法水さん、実は艇内に一個所、秘密の出入|扉《ドア》があるのですよ。しかも、
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