汲ーられました。寝台《ベッド》の上から、左手が妙にグッタリとした形で垂れ下がっているので、触《さわ》ってみると、すでに脈は尽き、氷のように冷たくなっていたのです。
それから始まった闇黒の中で、吾々は、眼が醒めると絶えず酒精《アルコール》を嚥《の》んで、うつらうつらと死に向って歩みはじめました。ところで、これは暗合かもしれませんけど、今度の事件が、それと同じなんですから、妙じゃありませんか。隣りにいる八住が、妙な音で咽喉《のど》を鳴らしたので、これはと思って手頸《てくび》を握りました。すると、それもやはり艇長と同じだったので、急いで夫人に急を告げたというわけなんです」
「いや、大変参考になりました」
法水は犬射に軽く会釈したが、今度はヴィデを呼んで、別の問いを発した。
「ところで、八住が殺された際に、貴方だけは椅子に落着いていて、動かなかったそうでしたね」
「無論そうなりましょうとも」
とヴィデは、黒眼鏡をガクンと揺すって、傷痕だらけの物凄い顔を、法水に向けた。
「僕は既《とう》から、この事件の起るのが予期されていたのです。なぜなら、遭難の夜には、吾々四人を前に、屍体の消失というあ
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