ヤに、聯字符を引いた。
「ところが、貴女も後になって気づかれたように、まったく死んだと信じられていた艇長が、その後も不可解極まる生存を続けていたのです。そして、『|鷹の城《ハビヒツブルグ》』が岬の角に来ると同時に、夜な夜な上陸しては、防堤のあたりを彷徨《さまよ》いはじめました。ねえ夫人《おくさん》、艇長はその土の上に、一夜に一字ずつ毒殺者の名を記していったのですよ」
 とそこで、現実の恐怖が再びしんしんと舞い戻ってくるのだったが、さて彼が取り出したものを見ると、それには奇様な符号が、並んでいるにすぎなかった。
[#防堤に書かれた符号の図(fig43656_02.png)入る]
 しかし法水は、それに妖魔のような気息《いぶき》を吹き込んでいった。
「この一団の符号が、この真裏に当る、防堤の上に記されてあったのですが、一見したところでは、なんのことはない子供の悪戯《わるさ》としか見えないでしょう。しかし、計らずもこれに、僕の偏狂な知識が役立ちました。つまり、これを古代火術符号([#ここから割り注]以上の符号は、火薬の始祖コンスタンチン・アンクリッツェン以降、ヴェネチアの攻城火術家アレッサン
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