チたが、もちろん怖れというのはそれではなかった。その室《へや》には、前方に色の褪せた窓掛が、ダラリと垂れているだけで、その蔭の窓にも隅の壁炉にも、それぞれ掛金や畳扉《たたみど》が下りてはいるが、壁炉の前にある紡車を見ると、それには糸の巻き外れたものが幾筋となくあって、明らかに触れた人手があったのを証拠立てていた。
 誰ひとり入ることのできないこの室《へや》で、紡車が巻かれてあった――まさにその変異は、最初法水が防堤の上で想像した一人の、眼に触れた最初の断片なのである。
 まして、夜な夜な八住が外出していたということは、またその渦を狭めるものであって、結局《とどのつまり》、すべてが「|鷹の城《ハビヒツブルグ》」に集注されてしまうのだが、そうして、二人はこの短時間のうちに、全身の胆汁《たんじゅう》を絞り尽したと思われるほどの、疲労を覚えたのであった。
 やがて、旧《もと》の室《へや》に戻ると、そこにはウルリーケが、皮肉そうな微笑を湛えて二人を待っていた。

      二、鉄仮面の舌

 ウルリーケの顔は、血を薄めたような灯影の中で、妙に狷介《けんかい》そうな、鋭いものに見えた。が、二人が
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