ホかり突き出てしまって、それを見るとほんとうに、ひとしお家畜《けもの》めいて憐《いじ》らしく思われました」
 とその声が、ふと杜絶《とぎ》れたかと思うと、彼女は瞳を片寄せて、耳を傾《か》しげるような所作《しぐさ》を始めた。
「ホラ、お聴きでございましょう。向うの室《へや》から、コトリコトリと聴えてくる音《ね》が……。あれがいま申し上げた紡車なのです。でもまあ、こんな時、誰が廻しているのでしょうねえ」
 朝枝の不審は、それ以上の動作には出なかったけれども、彼女が去った後の室内は、沈黙の中で凝《じっ》と虚空から見つめているものがある気がして、なにか由々しい怖《おぞ》ましげな力が、ぞくぞくと身の上に襲いかかってくるのを感じた。
 それまではいつか笑い声のうちに消え去るかと、朧《おぼ》ろな望みに耽っていたもの――それがいまや、吹きしく嵐と化したのであったが、二人はそこの閾《しきい》まで来たとき、ハッと打ち据えられたように顎を竦《すく》めた。
 それは、コトリと一つ、微《かす》かに響いたかと思われると、その長い余韻の上を重なるようにして、背後にある室《へや》から、盲人《めくら》の話声が聴えるのだ
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