フ後は杳《よう》として姿を消してしまったのだ。支倉君、氷島《イスランド》なんだよ――しかもその時は、ブルンヒルトの面前で行われ、また、それが動機となって、女王の不思議な運命悲劇が始まったのだ。ところが、この今様ニーベルンゲン譚詩《リード》になると、その氷島というのが何処あろうトリエステなんだよ」
「なに、トリエステ……」
「そうなんだよ。そこで支倉君、トリエステで|隠れ衣《タルンカッペ》を冠った、ジーグフリードというと、それはいったい、誰のことなんだろうね」
「すると君は、シュテッヘ大尉のことを云うのか。あの男は生きながら、『|鷹の城《ハビヒツブルグ》』の中で消え失せてしまったのだ……」
「いやいや、その名はまだ、口にする時機じゃないがね。しかし、いま判っているのは、ジーグフリードがその|隠れ衣《タルンカッペ》を、自分で冠ったのではなく、ブルンヒルトに被《かぶ》せられた――という一事なんだ。そして、それ以来地上から姿を消して、とうてい理法では信ぜられぬ生存を続けているのだが、ときおり海上に姿を現わして、いまなお七つの海を漂浪《さまよ》っているのだ。ねえ支倉君、あの神秘の扉を開く鍵は、|
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