ネんだよ」
「ブルンヒルト……」
 と検事はとっさに反問したが、なぜか検事の説を否定するにもかかわらず、法水が、かたわらウルリーケを邪《よこし》まな存在に指摘する――その理由がてんで判らなかった。
 法水は、烟《けむり》を吐いて続けた。
「と云うのは、クリームヒルトなら、ただの人間の女にすぎないさ。ところが、ブルンヒルトとなると、その運命がさらに暗く宿命的で、彼女を繞《めぐ》るものは、みな狂気のような超自然の世界ばかりだ。最初焔の砦を消したジーグフリードを見て、その男々しさに秘かに胸をときめかした。ところが、そのジーグフリードは、|隠れ衣《タルンカッペ》で姿を消し、グンテル王の身代りとなった。支倉君、君はこの比喩の意味が判るかね」
「|隠れ衣《タルンカッペ》……」
 と、その一つの単語の鋭犀《ヴィヴィッド》なひびきに、検事は思わずも魅せられて、
「すると、その形容の意味からして、君は、維納《ウイン》の鉄仮面を云うのか。それとも、また一面にはシュテッヘ、艇長、今度の事件――と『|鷹の城《ハビヒツブルグ》』の怪奇にも通じていると思うが……ああなるほど、いかにもブルンヒルトは、グンテル王の身
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