絶景万国博覧会
小栗虫太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)尾彦楼《おひころう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四五人|雪洞《ぼんぼり》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+去」、369−2]
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一、尾彦楼《おひころう》の寮に住む三人のこと
並《なら》びに老遊女二つの雛段を飾ること
なんにしろ明治四十一年の事とて、その頃は、当今の接庇雑踏《せっぴざっとう》とは異なり、入谷田圃《いりやたんぼ》にも、何処かもの鄙《ひな》びた土堤の悌《おもかげ》が残っていた。遠見の北廓を書割にして、茅葺屋根《かやぶきやね》の農家がまだ四五軒も残っていて、いずれも同じ枯竹垣を結び繞《めぐ》らし、その間には、用水堀や堰《せき》の跡などもあろうと云った情景。わけても、田圃の不動堂が、延宝の昔以来の姿をとどめていた頃の事であるから、数奇《すき》を凝らした尾彦楼の寮でさえも、鳥渡見《ちょっとみ》だけだと、何処
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