し。
ガリバルダは逆さになりて殺さるべし。
オリガは眼を覆われて殺さるべし。
旗太郎は宙に浮びて殺さるべし。
易介は挾まれて殺さるべし。
[#ここで字下げ終わり]
「まったく怖ろしい黙示です」とさすがの法水も声を慄《ふる》わせて、「四角の光背は、確か生存者の象徴《シムボル》でしたね。そして、その船形のものは、古代|埃及《エジプト》人が死後生活の中で夢想している、不思議な死者の船だと思いますが」と云うと、鎮子は沈痛な顔をして頷《うなず》いた。
「さようでございます。一人の水夫《かこ》もなく蓮湖《れんこ》の中に浮んでいて、死者がそれに乗ると、その命ずる意志のままに、種々《いろいろ》な舟の機具が独りでに動いて行くというのです。そうして、四角の光背と目前の死者との関係を、どういう意味でお考えになりますか? つまり、博士は永遠にこの館の中で生きているのです。そして、その意志によって独りでに動いて行く死者の船というのが、あのテレーズの人形なのでございます」
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  第二篇 ファウストの呪文
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    一、Undinus《ウンディヌス》 sich《
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