ゥら入り込んでゆくのを、眺めていた。ところが、あの樹皮亭《ボルケンハウス》の内枠には、様々な詩文が刻み込まれていて、その中にフィッツナーの|その時霧は輝きて入りぬ《ダン・ネーベル・ロー・グクテン》(Dann, Nebel−loh−guckten)――の一文があったのだ。つまり、その際の混淆《こんこう》された印象が丁抹国旗《ダーネブローグ》という、相似した失語になって現われたのだよ。そうすると支倉君、あの四句に分れていた伸子の言葉の中で、鐘鳴室《カリルロン》と武具室と――こう二つの印象だけが、奇妙にも、真中に挾まれている。となると……」と言葉を切って、その驚くべき心理分析に、法水は、最後の結論を与えた。
「すると当然、その首尾にある黄と紅――。その二つからうけた感覚が、最初のダンネベルグ事件と、終りの礼拝堂の場面でなければならないだろう。そうして、最後の紅が、絢爛《けんらん》たる宮廷楽師《カペルマイスター》の朱色の衣裳だとすれば、何故最初のダンネベルグ事件から、伸子は、黄という感覚をうけたのだろうか」そのあいだ検事と熊城は、さながら酔えるがごとき感動に包まれていた。が、ややあってから、熊
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