梶sところ》に来ると、朗読者は突然、それを運河《キャナラー》(Canalar)と発音してしまったと云うのだ。つまり、その朗読者が、それまで星座の形を頭の中に描いていたからで、いわゆるフロイドの云う――言い損いの表明にこびりついている感覚的痕跡――に相違ないのだ。また、一面には聯想というものが、その一字一字には現われず、全体の形体的印象――つまり、空間的な感覚となって現われたとも云えるだろう。しかし、伸子の場合になると、それが、ダンネベルグ事件から礼拝堂の惨劇に至る――都合四つの事件を表出化してしまったのだ。何故なら伸子は、洋橙《オレンジ》と云った後で、麦藁《ストロー》を束にして檸檬水《レモナーデ》を嚥《の》む――という言葉を吐いた。当然それには、鐘鳴器《カリルロン》に並んでいる鍵盤の列が、その印象に背景をなしていると思われた。それから、続いてダンネベルグ夫人の名を、丁抹国旗《ダーネブローグ》(Danebrog)と云い損ったのだが、それには明《あか》らさまに、武具室の全貌が現われているのだ。と云うのは、あの時伸子は、前庭の樹皮亭《ボルケンハウス》の中にいて、レヴェズの作った虹の濛気が、窓
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