ぬ音響を召使が聴いたのを知ったと云う――その結論は?
二、法水は拱廊《そでろうか》で何を見たのであるか?
三、法水が卓子灯《スタンド》を点けて、床を計ったのは?
四、法水はテレーズ人形の室の鍵に、何故逆説的な解釈をしようと、苦しんでいるのであるか?
五、法水は何故に家族の訊問を急がないのか?
[#ここで字下げ終わり]
 読み終ると、法水は莞爾《にこり》として、一・二・五の下に|――《ダッシュ》を引いて解答と書き、もし万に一つの幸い吾にあらば[#「もし万に一つの幸い吾にあらば」に傍点]、犯人を指摘する人物を発見するやも知れず[#「犯人を指摘する人物を発見するやも知れず」に傍点](第二あるいは第三の事件)――と続いて認《したた》めた。検事が吃驚《びっくり》して顔を上げると、法水はさらに第六の質問と標題を打って、次の一行を書き加えた。――甲冑武者はいかなる目的の下に、階段の裾を離れねばならなかったのだろう?
「それは、君がもう」と検事は眼を瞠《みは》って反問したが、その時|扉《ドア》が静かに開いて、最初呼ばれた図書掛りの久我鎮子が入って来た。

    三、屍光|故《ゆえ》なくしては

 久
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