sか》き消えてしまって、この館は再び白日の下に曝《さら》されることになった。そこで、まず順序どおりに、最初のダンネベルグ事件から説明してゆくことにしよう。しかし、あの時夫人が何故ブラッド洋橙《オレンジ》のみを取ったかという点に、僕は今まであの最短線《ジオデスイク・ライン》――サントニン([#ここから割り注]駆虫剤[#ここで割り注終わり])の黄視症を疎《おろそ》かにしていたのだ。あの視野一面を黄色に化してしまう中毒症状が、軽い近視のせいも手伝って、果物皿の上から、梨もそれ以外の洋橙《オレンジ》も、皿の地と同じ一色に塗り潰《つぶ》してしまったのだよ。したがって、特異な赤味を帯びているブラッド[#「ブラッド」は底本では「ブラット」]洋橙《オレンジ》のみしか、ダンネベルグ夫人の眼には映らなかったのだ。それにまた、サントニン中毒特有の幻味幻覚などが伴ったので、あれほど致死量をはるかに越えた異臭のある毒物でも、ダンネベルグ夫人は疑わず嚥下《えんか》してしまったのだよ。けれども、その思い付きというのは、けっして偶然の所産ではない。根本の端緒を云えば、やはり、犯人に課した僕の心理分析にあったのだ。しか
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