末n色の雲が、低く樹林の梢間際にまで垂れ下っていて、それがいつまでも動かなかった。そういった荒涼たる風物の中で、構内は人影も疎《まば》らなほどの裏淋しさ、象徴樹《トピアリー》の籬《まがき》が揺れ、枯枝が走りざわめいて、その中から、湧然《ようぜん》と捲き起ってくるのが、礼拝堂で行われている、御憐憫《ミセリコルディア》の合唱だった。法水は館に入ると、独りで広間《サロン》の中に入って行ったが、そこで彼の結論が裏書きされたことは、再びダンネベルグ夫人の室《へや》で、二人の前に現われた時の顔色で判った。そして、いまや礼拝堂に、家族の一同に押鐘博士までも加えた――関係者の全部が集っているのを知ると、法水はなんと思ったか、葬儀の発足をしばらく延期するように命じた。それから、
「勿論、犯人が礼拝堂の中にいるのは確かなんだよ。しかも、もう絶対に動くことの出来ぬ状態にある。けれども、僕は伸子に――ことにその遺骸が、地上にある間に、犯人の名を告げなければならぬ義務があると思うのだ」と云ってしばらく口を噤《つぐ》んでいたが、やがて、錯雑した感情を顔に浮べて云い出した。
「ところで支倉君、さしもの巨人の陣営が掻
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