フが、アレキサンドライトと紅玉《ルビー》との関係なんですよ。ねえ伸子さん、たしかあの時貴女は、拒絶の表象《シムボル》――紅玉《ルビー》をつけたのではありませんか」
「いいえ、けっして……」と伸子は法水を凝《じ》っと見詰め、声に力を罩《こ》めた。「その証拠には、演奏が始まる直前でしたけども、旗太郎様が私の髪飾りを御覧になって、いったいレヴェズ様のアレキサンドライトをどうして――とお訊ねになったのを憶えておりますわ」
 その伸子の一言は、依然レヴェズの自殺の謎を解き得なかったばかりではなく、さらに法水へ呵責《かしゃく》と慚愧《ざんき》を加え、彼の心の一隅に巣喰っている、永世《とこよ》の重荷をますます重からしめた。しかし法水は、ついにこの惨劇の神秘の帳《とばり》を開き、あれほど不可能視されていた、帝王切開術《カイゼル・シュニット》に成功した。すでに、その時は夜の刻みが尽きていて、胸の釦《ボタン》に角燈を吊した小男が、門衛小屋から出掛けてきた。一つ二つ鶫《つぐみ》が鳴きはじめ、やがて堡楼の彼方から、美しい歌心の湧き出ずにはいられない、曙《あけぼの》がせり上ってくるのであった。法水は伸子と窓際に
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