ッいれん》して、恐らく侮蔑と屈辱を覚えたとしか思われぬような、潔癖さが口をついて出た。
「それでは、私に聯想語をお求めになりますの。黄から紅《くれない》に――そうすると、それが黄橙色《オレンジ》になるではございませんか。黄橙色《オレンジ》――ああ、あのブラッド洋橙《オレンジ》のことを仰言《おっしゃ》るのでしょう。それで、きっと貴方は、私が嚥《の》んだ檸檬水《レモナーデ》の麦藁《ストロー》から、石鹸《シャボン》玉が飛び出したとでも……。いいえ私は、麦藁《ストロー》を束にして吸うのが習慣なのでございますわ。でもそうなったら、その束が一度に弦《つる》へは、番《つが》らないではございませんか」と伸子の皮肉が、猛烈な勢いで倍加されていった。「それから、あのダン――丁抹国旗《ダーネブローグ》が悲しい半旗となったということが、あのダンネベルグが私に何の関係がございますの。そして、青酸加里がいったいどんな……」
「いや、けっしてそんな……。むしろその事は、僕が津多子夫人に対して云うべきでしょう」と法水は微かに紅を泛《うか》べたが、静かに云った。
「実は、その黄から紅[#「黄から紅」に傍点]に――と云う
前へ 次へ
全700ページ中672ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング