セ葉を截ち切って、法水は鋭く旗太郎を見据えた。「しかし、この襟布《カラー》には、勿論誰の顔も現われてはいません。けれども、いずれこの事件の恐竜《ドラゴン》は、鎖の輪から爪を引き抜くことが、できなくなってしまうでしょう」
汗まみれになった旗太郎には、このわずかな間に、胆汁が全身に溢《あふ》れ出たのではないかと思われた。すでに、怒号する気力も尽き果てて、ぼんやりあらぬ方を瞶《みつ》めている。が、やがて、フラフラ揺れている身体が棒のように硬くなったかと思うと、喪心した旗太郎は、顔を水平に打衝《うちつ》けて卓上に倒れた。それを法水が室外に連れ去らせると、セレナ夫人も軽く目礼して、その後に続いた。そうして、伸子一人が残された室内には、しばらく弛《ゆる》みきった、気懶《けだる》い沈黙が漂っていた――ああ、あの異常な早熟児が犯人だったとは。そのうち、歩き廻っていた法水が座に着くと、組んだままの腕をズシンと卓上に置き、意味ありげな言葉を伸子に投げた。
「ところで、あの黄から紅に[#「黄から紅に」に傍点]――ですか、僕はあくまでその真実を知りたいのですよ」
すると、そのとたん彼女の顔が神経的に痙攣《
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