[マンやショパン、それから改訂版では、提琴家《ヴァイオリニスト》のイザイエの苦悩などが挙げられていて、なおかつ音楽家の全生命たる、骨間筋([#ここから割り注]指の筋肉[#ここで割り注終わり])にも言及しているのです。それによるとライブマイルは、急激な力働がその筋に痙攣《けいれん》を起させる――と説いています。しかし、勿論それは、この場合結論として確実なものではありません。けれども、貴方が演奏家である限りは、とうていその慣性を無視することは出来まいと思われるのです。たぶんあの後には、左手の二つの指で、弓《キュー》を持つのが不可能だったのではありませんか」
「す、すると、もうそれだけですか――貴方の降霊術《ティシュリュッケン》と云うのは? 机の脚をがたつかせて、厭《いや》に耳ざわりな……」とあの不気味な早熟児は、満面に引っ痙《つ》れたような憎悪を燃やせて、やっと嗄《か》すれ出たような声を出した。しかし、法水はさらに急追を休めず、「いやどうして、それこそ|正確な中庸な体系《ジャスト・ミリュウ・システム》――なんですよ。それから、貴方は人形の名を、いつぞやダンネベルグ夫人に書かせましたっけね」
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