ェ打ち壊してくれたのでした」
「私は、装飾灯《シャンデリヤ》が消えるとすぐに、竪琴《ハープ》の方から人の近づいて来る気配を感じました」とそう云いながら、たぶん評論家の鹿常充《しかつねみつる》と思われる――その額の抜け上った四十男は、左右を振り向いて周囲の同意を求めた。そして続けた。「サア、それは気動とでも云うのでしょうかな。それより、絹が摺れ合うと唸《うな》りが起りますから、たぶんそれではないかとも思うのです。しかしいずれにしても、その音はしだいに拡がりを増してまいりました。そして、それがパッタリ杜絶えたかと思うと、同時に壇上で、あの悲痛な呻《うめ》き声が発せられたのです」
「なるほど貴方の筆鋒《ペン》には、充分毒殺効果はあるでしょう」と法水は、むしろ皮肉な微笑を洩らして頷《うなず》いた。「ですが、こういうハックスレイを御存じですか。――証拠以上に出た断定は、誤謬《ごびゅう》と云うだけでは済まされない、むしろ犯罪《クライム》である――と。ハハハハハ、どうせ|音楽の神《ミューズ》の絃《いと》の音までも聴けるのでしたら、そんな風に、鶏《とり》の声でイビュコスの死を告げると云うのはどうですか
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