謔、とするのが、ファウスト博士の残虐な快感であるかもしれないが、ともあれ眼前の奇観には、魂の底までも陶酔せずには措《お》かない、妖術的な魅力があった。扉《ドア》が開かれると、内部《なか》は一面の白い壁で、さながら眼球を爛《ただ》らさんばかりの熱気である。しかし、その時熊城が、扉の側にある点滅器を捻《ひね》り、またその下の電気|煖炉《ストーブ》に眼を止めて、|差込み《プラグ》を引き抜いたので、やがて濛気と高温が退散するにつれ、室の全貌がようやく明らかになった。
 つまりこの一劃は、殯室《モーチュアリー・ルーム》で云うところのいわゆる前室に当るもので、突き当りの扉《ドア》の奥が、公教《カトリック》の戯言《ぎげん》で霊舞室《おどりば》と呼ばれる中室になっていた。そして、隅に明いている排水孔から、落ち込んだ水が流れ出ているのである。また、中室との境界《さかい》には、装飾のない厳《いか》めしい石扉《いしど》が一つあって、側《かたわら》の壁に、古式の旗飾りのついた大きな鍵がぶら下っていた。その扉《ドア》には鍵が下りてなく、石扉特有の地鳴りのような響を立てて開かれた。ところが、不思議なことには、前室
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