ェ爛《ただ》れんばかりの高温にもかかわらず、今や前方に開かれてゆく闇の奥からは、まるで穴窟《あなぐら》のような空気が、冷やりと触れてくるのだ。そして、扉《ドア》が一杯に開ききられたとき、その薄明りの中から、法水は自分の眼に、眩《くら》み転《まろ》ばんばかりの激動をうけたのだった。パッと眼を打ってきた白毫《びゃくごう》色の耀きがあって、思わず彼は、前方の床を瞶《みつ》めたまま棒立ちになってしまった。それはけっして、この僧院造り特有の、暗い沈鬱な雰囲気《ムード》が、彼に及ぼした力ではなかったのだ。
[#礼拝堂付近の図(fig1317_49.png)入る]
そこの床上一面には、数十万の白|蚯蚓《みみず》を放ったかと思われるような、細い短い曲線が無数にのたうち交錯していて、それが積り重なった埃《ほこり》の上で、地の灰色を圧していて、清冽な――しかし見ようによっては、妙に薄気味悪く粘液的にも思われる白光を放っているのだった。――それは、瞶《みつ》めていると、視野に当る部分だけが、荘厳な紋章模様《ブレゾンリー》のような形になって、宙に浮び上り、パッと眼に飛びついてくるのだ。その光は、さながらゴッ
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