sモーチュアリー・ルーム》の中へ落ち込ませたに相違ない。そこで、扉《ドア》を開くことになったが、それには鍵が下りていて、押せど突けども、微動《みじろぎ》さえしないのである。熊城は恐ろしい勢いで、扉《ドア》に身体を叩きつけたが、わずかに木の軋《きし》る音が響いたのみで、その全身が鞠《まり》のように弾《はじ》き返された。すると、熊城は、身体を立て直して、さながら狂ったような語気で叫んだ。
「斧《おの》だ! この扉《ドア》がロッビアだろうが左甚五郎の手彫りだろうが、僕は是《ぜ》が非でも叩き破るんだ」
そうして斧が取り寄せられて、まず最初の一撃が、把手《ノッブ》の上のあたり――羽目《パネル》を目がけて加えられた。木片が砕け飛んで、旧式の槓杵《タンブラー》錠装置が、木捻《もくねじ》ごとダラリと下った。すると意外にも、その楔形《くさびがた》をした破れ目の隙から、濛々たる温泉のような蒸気が迸《ほとばし》り出たのだった。
その瞬間、一同は阿呆のような顔になって、立ち竦《すく》んでしまった。その湯滝の蔭に、たといいかなる秘計が隠されていようと、それはこの場合問題ではない。また、幻想を現実に強《し》い
前へ
次へ
全700ページ中585ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング