ーの城館で、塗油式を行う前に屍体を置く室[#ここで割り注終わり])だったのでございます。しかし、現在では改装されておりまして、雑具を置く室になっておりますが」
ところが、広間《サロン》を横切って廊下を歩んで行くにつれて、水流の轟きはいよいよ近くに迫ってくる。そして、目指す殯室《モーチュアリー・ルーム》の手前まで来ると、その――耶蘇大苦難《クルシフィクション》に、聖パトリック十字架のついた扉《ドア》の彼方から、おどろと落ち込んでいる水音が湧き上ってきた。と同時に、彼等の靴を微かに押しやりながら、冷やりと紐穴から這い込んできたものがあった。
「あっ、水だ!」と熊城は、思わず頓狂な叫び声を立てたが、跳び退《の》いた機《はず》みに蹌踉《よろめ》いて、片手を左側にある洗手台《せんしゅだい》で支えねばならなかった。しかし、それで万事が瞭然《りょうぜん》となった。すなわち、扉《ドア》向うの壁に、三つ並んでいる洗手台の栓《せん》を開け放しにして、そこから溢れてくる水に、自然の傾斜を辿《たど》らせたのだった。そして、扉《ドア》の閾《しきい》に明いている、漆喰《しっくい》の欠目から導いて、その水流を殯室
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