ソょうど第二楽章に入ったばかりのところだった。竪琴《ハープ》は伸子が弾いていて、その技量が、幾分他の三人――すなわち、クリヴォフ、セレナ、旗太郎に劣るところは、云わば瑕瑾《かきん》と云えば瑕瑾だったろうけれども、しかし、それを吟味する余裕《ゆとり》もないのだった。と云うのは、色と音が妖しい幻のように、入りみだれている眼前の光景には、たった一目で、十分感覚を奪ってしまうものがあったからだ。下髪《さげお》の短いタレイラン式の仮髪《かつら》に、シュヴェツィンゲン風を模した宮廷楽師《カペルマイスター》の衣裳。その色濃く響の高い絵には、その昔テムズ河上におけるジョージ一世の音楽饗宴が――すなわちヘンデルの、「水楽《ウォーター・ミュージック》」初演の夜が髣髴《ほうふつ》となってくるように、それはまさしく、燃え上らんばかりの幻であり、また眩惑の中にも、静かな追想を求めてやまない力があった。
法水一行は、最後の列に腰を下して、陶酔と安泰のうちにも、演奏会の終了を待ち構えていた。しかも、彼等のみならず、誰しもそうであったろうが、このように煌々《こうこう》と輝く大|装飾灯《シャンデリヤ》の下では、まずい
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