フまま左に傾きながら倒れていったのだ。しかし、それが判ったところで、けっして犯人が指摘されるものではなく、むしろ伸子の無辜《むこ》を明らかにしたにすぎない。いや、ただ単に、伸子を倒した最後の止めを詳しくしたのみで、依然として犯人の顔は、鐘鳴器《カリリヨン》室の疑問の中に隠されている。そして、問題が室の内部を離れて、今度は、廊下と鉄梯子に移ってしまったのだよ。しかし、こうして伸子が犯人でないとすると、武具室のあらゆる状況が、クリヴォフに傾注されてゆく――それも、けだしやむを得んだろうがね」
 こうして、分析したものが一点に綜合されるや、それが検事と熊城を、瞬間眩惑の渦中に投げ入れてしまった。しかし、その間熊城は、さも落ち着かんとするもののように、黙然と莨《たばこ》を喫《くゆ》らしていたが、ややあってから悲しげに云った。
「しかし法水君、どの場面でもクリヴォフの不在証明《アリバイ》は、とうてい打ち破《こわ》し難いものなのだよ。どうしてもメースンの『矢の家』みたいに、坑道でも発見されないかぎり、この事件の解決は結局不可能のような気がするんだ」
「それでは熊城君」と法水は満足そうに頷《うなず》
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