、けれど、元来|把手《ハンドル》による発射ではなく、また、ラミイの変質した粉末も、ついに弦の中から洩れることがなかったのだ。ああクリヴォフ――あのカウカサス猶太人《ジュウ》は、たしかグリーン家のアダの故智を学んだのだ。しかし、最初は恐らく、背長椅子《バルダキン》に当てるくらいのところだったろう。ところが、その結果偶然にも、あの空中|曲芸《サーカス》を生んでしまったものだ」
まさに法水の独擅場《どくせんじょう》だった。しかし、それには一点の疑義が残されていて、それをすかさず検事が衝《つ》いた。
「なるほど、君の理論には陶酔する。また、それが現実にも実証されている。しかし、とうていそれだけでは、クリヴォフに対する刑法的意義が十分ではないのだ。要するに、問題と云うのは、その二重の反射に必要な窓の位置にあるのだよ。つまり、クリヴォフか伸子か――そのどっちかの道徳的感情にある訳じゃないか」
「それでは、伸子の演奏中に、幽霊的な倍音を起させたのは……。事実支倉君、あの間に、鐘楼から尖塔へ行く、鉄梯子を上った者があったのだ。そして、中途にある、十二宮の円華窓《えんげまど》に細工して、あの楽玻璃《グ
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