A犯人は弦の中に隠しておいたのだよ。ところで、よく無意識に子供などがやる力学的な問題だが、元来弓というものは、弦を縮めてそれを瞬間|弛《ゆる》めたにしても、通例引き絞って、発射したと同様の効果があるのだ。つまり犯人は、あらかじめ弦の長さよりも短いラミイ――それも長さの異なる二本を使って、その最も短い一本で、その長さまでに弦を縮めたのだ。無論外見上も、撚り目を最極まで固くすれば、不審な点は万々にも、残らないと思うのだがね。そして、そこへ犯人が、あの窓から招き寄せたものがあったのだ」
「しかし、火精《ザラマンダー》ではあの虹が……」と検事は、眩惑されたように叫んだ。
「うん、その火精《ザラマンダー》だが……かつて、水罎《みずびん》に日光を通すという技巧を、ルブランが用いた。けれども、その手法は、すでに、リッテルハウスの、『|偶発的犯罪に就いて《ユーベル・ディ・ナツユルリッヘン・フェルブレッヘン》』の中に、述べられてある。しかし、この場合は、その水罎に当るものが、窓硝子の焼泡にあったのだよ。つまり、それがあの上下窓の中で、内側のものの上方にあって、いったんそこへ集った太陽の光線が、外側の窓枠
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