A法水は眉間を狭めて、みるみるその顔に危惧《きぐ》の色が波打ってきた。
「ねえ、支倉君、六引く一は五だろう。その五には毒殺的効果があるのだよ。しかし、いまの伸子の場合には、六枚の葉全部が必要ではなかったのだ。つまり、十分〇・〇一くらいを含んでいる一枚だけで、あの程度の発汗と発音の不正確を起すことが出来るのだからね。すると、犯人がまだ握っているはずの五枚――。その残りに、僕は犯人の戦闘状態《ステート・オブ・ウォア》を見たような気がするのだよ」
「ああ、なんという怖ろしい奴《やつ》だろう」と神経的な瞬《またた》きをして、熊城もこころもち顫《ふる》えを帯びた声で云った。
「僕は毒物というものの使途に、これまで陰険なものがあろうとは思わなかったよ。どうして、あの冷血無比なファウスト博士でなけりゃ、残忍にも、これほど酷烈な転課手段を編み出せるもんか」
検事は側《かたわら》を振り向いて、一行を案内した園芸師に訊ねた。
「最近に誰か、この温室に出入りした者があったかね」
「い、いいえ、この一月ばかりは誰方《どなた》も……」とその老人は、眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って吃《
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