ヌも》ったが、検事を満足させるような回答を与えなかった。それに法水は、押しつけるような無気味な声音で追求した。
「オイ、本当の事を云うんだ。広間《サロン》にある藤花蘭《デンドロビウム・ティルシフロルム》の色合わせは、ありゃ、たしか君の芸じゃあるまいね」
 この専門的な質問は、ただちに驚くべき効果をもたらした。まるで老園芸師は、あたかもそれ自身が弓の弦《つる》ででもあるかのように、法水の一打で思わず口にしてしまったものがあった。
「しかし、傭人という私の立場も、十分お察し願いたいと思いまして」と訴えるような眼で、憐憫《あわれみ》を乞うような前提を置いてから、怯《お》ず怯ず二人の名を挙げた。「最初は、あの怖ろしい出来事が起りました当日の午後でございましたが、その時旗太郎様が珍しくお見えになりました。それから、昨日《きのう》はセレナ様が……、あの方は、この乱咲蘭《カテリア・モシュ》をたいそうお好みでございまして。ですが、このヤポランジイの葉だけは、仰言《おっしゃ》られるまでいっこうに気がつきませんでした」
 矮樹《わいじゅ》ヤポランジイの枝に、二つの花が咲いた。すなわち、最も嫌疑の稀薄だった
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