ネ言葉を吐いた。そして、咄嗟《とっさ》の逆転に何が何やら判らず、ひたすら狼狽しきっている熊城等を追い立てて、伸子の身体を愴惶《そうこう》と運び出させてしまった。
「あの発汗を見ると、たぶんピロカルピンの中毒だろうよ」と暫時《しばらく》こまねいていた腕を解いて、法水は検事を見た。が、その顔には、まざまざと恐怖の色が泛《うか》んでいた。「とにかく、あの女が、地精《コボルト》の札《ふだ》を僕等が発見したのを、知る気遣いはないのだから、勿論自殺の目的で嚥《の》んだのではない。いや、たしかに嚥まされたんだよ。それも、けっして殺すつもりではなく、あの迷濛状態を僕等の心理に向けて、伸子に三度目の不運をもたらそうとしたに違いないのだ。ねえ支倉君、それが三段論法の前提となるのも知らずに、あるものを非論理的だと断ずることは出来まい。すると、伸子とピロカルピン――つまりその前提としてだ。まず、壁を抜き床を透かしてまで、僕等の帷幕《いばく》の内容を知り得る方法がなけりゃならん訳だ。ああ、実に恐ろしいことじゃないか。先刻《さっき》この室《へや》で交した会話が、ファウスト博士には既《とう》に筒抜けなんだぜ」
事
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