オ》の中に突っ込まれてあったのですわ。私は、それをレヴェズ様にだけお話しいたしました。ですからきっとあの方が、それを貴方がたに密告したに相違ございませんわ」
「いや、あのレヴェズという人物には、今どき珍しい騎士的精神があるのですよ」と静かに云いながら、法水は怪訝《けげん》そうに相手の顔を瞶《みつ》めていたが、「しかし、本当の事を云うんですよ。伸子さん、あの札はいったい誰が書いたのですか」
「私、存――存じません」と伸子は、救いを求めるような視線を法水の顔に向けたが、その時、彼女の発汗がますますはなはだしくなって、舌が異様にもつれ、正確に発音することさえ出来なくなってしまった。その――犯人伸子の窮境には、思わず熊城を微笑《ほほえ》ましめたものがあった。ところが、法水はさながら冷静そのもののような態度で、ややしばし、伸子の額に視線を降り注ぎ、顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》に脈打っている、繩のような血管を瞶《みつ》めていた。が、ふと額の汗を指で掬《すく》い取ると、彼の眉がピンと跳ね上って、
「こりゃいかん。解毒剤《げどくざい》をすぐ!」と、この状況に予想もし得ない意外
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