宸ヘ、ジイッと弾条《ぜんまい》の響を立てて、今|行《おこな》ったとは反対の方向に廻りはじめる。その時|固唾《かたず》を嚥《の》んで見守っていた一同の眼に、明らかな駭《おどろ》きの色が現われた。何故なら、その廻転につれて、文字盤が、左転右転を鮮かに繰り返してゆくではないか。そうしているうちに、ジジイッと、機械部の弾条《ぜんまい》が物懶《ものう》げな音を立てると同時に、塔上の童子人形が右手を振り上げた。そして、カアンと鐘《チャペル》に撞木《しゅもく》が当る、とその時まさしく扉《ドア》の方角で、秒刻の音に入り混《ま》ざって明瞭《はっきり》と聴き取れたものがあった。ああ、再び扉が開かれたのだった。一同はフウと溜めていた息を吐き出したが、熊城は舌なめずりをして、法水の側に歩み寄った。
「なんて、君という人物は、不思議な男だろう」
 しかし法水は、それには見向きもせずに、すでに観念の色を泛《うか》べている津多子の方を向いて、「ねえ夫人《おくさん》、つまり、この詭計《トリック》の発因と云うのが、博士にかけられた貴女の電話にあったのですよ。しかし、それを僕に濃く匂わせたのは、現に抱水クロラールを嚥《の
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