tまされているにもかかわらず、貴女が、実に不可解な防温手段を施されていたということなんです。あの、まるで木乃伊《ミイラ》のように、毛布をクルクル捲き付けられていなければ、恐らく貴女は、数時間のうちに凍死していたでしょう。痳酔剤[#「痳酔剤」はママ]を嚥《の》ませた、しかし、殺害の意志がない――。そういう解しきれない矛盾が、僕の懸念を濃厚にしたのでした。ところで夫人《おくさん》、あの夜|貴女《あなた》がこの扉《ドア》を開かれて、さてそれからどこへ行かれたものか、当ててみましょうか。いったい、薬物室の酸化鉛の瓶《びん》の中には、何があったのでしょう。あの褪《あ》せやすい薬物の色を、依然鮮かに保たせていたのは……」
「ですけど」津多子はすっかり落着いていて、静かな重味のある声音《こわね》でいった。「あの薬物室の扉《ドア》が、私がまいりましたときには、すでに開かれておりました。それに、抱水クロラールにも、その以前に手を付けたらしい形跡が残っていたのですわ。もう申し上げる必要はございませんでしょうが、あの酸化鉛の罎《びん》の中には、容器に蔵《おさ》めた二グラムのラジウムが隠されてあったのです。そ
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