ゥ殺を決意する場面に現われているからなんだ」と法水はこころもち臆したような顔色になったが、その口の下から、眉を上げ毅然《きぜん》と云い放ったものがあった。
「けれども支倉君、あの対決の中には、犯人にとってとうてい避け難い危機が含まれているんだ。事実僕が引っ組んだのは、レヴェズじゃないのだ。やはりファウスト博士だったのだよ。実を云うと、僕はまだ事件に現われて来ない、五芒星呪文の最後の一つ――地精《コボルト》の札の所在《ありか》を知っているのだがね」
「なに、地精《コボルト》の紙片※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」検事も熊城も、仰天せんばかりに驚いてしまった。しかし、法水の眉宇間には、賭博《とばく》とするには、あまりに断定的なものが現われていた。彼の凄愴《せいそう》な神経作用《ナーヴァシズム》が、いかなる詭計によって、あの幽鬼の牙城に酷迫したのであろうか。そのにわかに緊張した空気の中で、法水は冷たくなった紅茶を啜《すす》り終ると語りはじめたが、それは、驚くべき心理分析だったのだ。
「ところで、僕はゴールトンの仮説《セオリー》を剽竊《ひょうせつ》して、それで、レヴェズの心像を分析してみたの
前へ
次へ
全700ページ中527ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング