る。ところが、そうして相手が自失した有様に、むしろ法水は、残忍な反応を感じたらしかった。彼は、手中の生餌《いきえ》を弄《もてあそ》ぶような態度で、ゆったり口を開いた。
「事実あの虹は、皮肉な嘲笑的な怪物でしたよ。ところで貴方は、東《オストロ》ゴートの王テオドリッヒを……。あのラヴェンナ城塞の悲劇を御存じでしょうか」
「フム、最初射損じても、テオドリッヒには二の矢に等しい短剣があったのです。だがしかしだ、儂《わし》は、苦行者でも殉教者でもない。むしろそういう浄罪|輪廻《りんね》の思想は、儂《わし》にではなくファウスト博士に云ってもらいたいものだ」とレヴェズが声を慄《ふる》わせ、満面に憎悪の色を漲《みなぎ》らしたと云うのは、そのラヴェンナ城の悲劇に、クリヴォフ事件を髣髴《ほうふつ》とさせる場面《シーン》があったからだ。
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(註)紀元後四九三年三月、西|羅馬《ローマ》の摂政オドワカルは、東ゴートの王テオドリッヒとの戦いに敗れて、ラヴェンナの城に籠城し、ついに和を乞うた。その和約の席上で、テオドリッヒは家臣に命じ、ハイデクルッグの弓でオドワカルを狙わせたのであったが、
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