トいることなのです。ああ、あのディグスビイの毒念が、未だ黒死館のどこかに残されているような気がしてならないじゃありませんか。しかも、確かそれは、人智を超絶した不思議な化体《けたい》に相違ないのです。いや、僕はもっと極言しましょう。蘭貢《ラングーン》で投身したというディグスビイの終焉《しゅうえん》にも、その真否を吟味せねばならぬ必要がある――と」
「ふむ、ディグスビイ……。あの方が事実もし生きておられるなら、ちょうど今年で八十になったはずです。しかし法水さん、貴方が童謡と云われたのは、つまりそれだけの事ですかな」とレヴェズは依然嘲侮的な態度を変えないのだった。しかし、法水は関《かま》わずに、冷然と次の項目に移った。
「云うまでもなく、ディグスビイの無稽《むけい》な妄想と僕の杞憂《きゆう》とが、偶然一致したのかもしれません。しかし、次の算哲の件《くだ》りになると、まず誰しも思い過しとは思わないものが、実に異様な生気を帯びてくるのですよ。勿論、算哲が遺産の配分について採《と》った処置は、明白な動機の一つです。また、それには、旗太郎以下津多子に至る五人の一族が、各自各様の理由でもって包含されて
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