「るのです。しかし、それ以外もう一つの不審と云うのは、ほかでもない遺言書にある制裁の条項でして、それが、実行上ほとんど不可能だと思われるからです。ねえレヴェズさん、仮令《たとえ》ば恋愛というような心的なものは、それをどうして立証するのでしょうね。ですから、そこに算哲の不可解な意志が窺《うかが》えるように思われて、つまり僕にとれば、開封がもたらした新しい疑惑と云っても差支えないのですよ。しかも、それは単独に切り離されているものではなくて、どうやら一縷《いちる》の脈絡が……。別に僕が、内在的動因と呼んでいるのがあって、その二点の間を通《かよ》っているものがあると思われるのです。そこでレヴェズさん、僕は思いきって露骨《あけすけ》に云いますがね。何故、貴方がた四人の生地と身分とが、公録のものと異なっているのでしょうか。で、その一例を挙げればクリヴォフ夫人ですが、表面あの方は、カウカサス区地主の五女であると云われている。しかし、その実|猶太《ユダヤ》人ではないでしょうか」
「ウーム、いったいそれを、どうして知られたのです」とレヴェズは、思わず眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》
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