キると、まずレヴェズの方で、老獪《ろうかい》そうな空咳《からせき》を一つしてから切り出した。
「時に、先刻遺言書を開封なさったそうですな。すると、この室《へや》にお出でになったのも、儂《わし》にその内容を講釈なさろうというおつもりで。ハハハハ、だが法水さん、たしかあれは莫迦《ばか》げた遊戯《ゲーム》のはずで、いや今ですからお話しますがね。実を云いますと、開封すなわち遺言の実行なのです。つまり、あれには期限の到来を示す意味しかなくて、しかも、その内容は即刻実行されねばならんのですよ」
「なるほど……。いかにもあのままでは、偏見はおろか、錯覚さえも起す余地はありますまい。だが、しかしレヴェズさん、とうとうあの遺言書以外に、僕は動機の深淵を探り当てましたよ」と法水は、微笑の中に妙に棘々《とげとげ》しいものを隠して、相手に向けた。「ところで、それについて、ぜひにも貴方の御助力が必要になりましてな。実を云うと、その底深い淵の中から、奇異《ふしぎ》な童謡が響いてくるのを聴いたのでしたよ。ああ、あの童謡――それは事実僕の幻聴ではなかったのです。勿論、それ自らはすこぶる非論理的なもので、けっして単独で
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