ィ入りになったのだろうと思いますわ。その証拠には、あの方の姿が、帷幕《とばり》の隙間からチラと見えた時には、そこから少し右肩をお出しになっていて、そのままの形でしばらく立っていらっしゃったのですから。そのうち側の椅子を引き寄せになって、やはりその、二つの帷幕《とばり》の中間《あいだ》の所へお掛けになりました。ねえいかが法水さん、私の陳述の中には、どの一つだって、算哲様をはじめ黒死館の精霊主義《アニミズム》が現われてはおりませんでしょう――だって、正直は最上の術策なりと申しますもの」
「ありがとう。もうこれ以上、貴女にお訊ねすることはありません。しかし、一言御注意しておきますが、仮令《たとえ》この事件の動機が、館の遺産にあるにしてもですよ、御自分の防衛ということには、充分御注意なさった方がいいと思います。ことに、家族の人達とは、あまり繁々《しげしげ》と接近なさらないように――。いずれ判るだろうと思いますが、それが、この際何よりの良策なんですからね」と意味あり気な警告を残して、法水は伸子の室を去った。しかし、その出際に、彼は異様に熱の罩《こ》もった眼で、扉《ドア》並びの右手の羽目《パネル》
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