mと旗太郎とが対座していたが、一行を見ると立ち上って迎えた。医学博士押鐘童吉は五十代に入った紳士で、薄い半白の髪を綺麗《きれい》に梳《くしけず》り、それに調和しているような卵円形の輪廓で、また、顔の諸器官も相応して、それぞれに端正な整いを見せていた。総じて、人道主義者《ヒューマニタリアン》特有の夢想に乏しい、そして、豊かな抱擁力を思わせるものがあった。博士は、法水を見ると慇懃《いんぎん》に会釈して、彼の妻を死の幽鎖から救ってくれたことに、何度も繰り返して感謝の辞を述べた。しかし、一同が座に着くと、まず博士が興なげな調子で切り出した。
「いったいどうしたと云うんです。法水さん。いまに誰もかも、元素に還されてしまうのじゃないでしょうか。いったい、犯人は誰ですかな。家内は、その影像《ファントム》を見なかったと云ってますよ」
「さよう、まったく神秘的な事件です」と法水は伸ばした肢《あし》を縮めて、片肱を卓上に置いた。「ですから、指紋が取れようが糸が切れていようが、とうてい駄目なのです。要するに、あの底深い大観を闡明《せんめい》せずには、事件の解決が不可能なのですよ。つまり、臨検家《ヴィジター》
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