A磅※[#「石+(蒲/寸)」、第3水準1−89−18]《ほうはく》と迫ってくるものがあったのは事実だった。
「なるほど、明白にディグスビイの告白だが、これほど怖ろしい毒念があるだろうか」検事は思いなし声を慄《ふる》わせて、法水を見た。「たしかに文中にある尻軽娘と云うのは、テレーズのことを指して云うのだろう。すると、テレーズ・算哲・ディグスビイ――とこの三角恋愛関係の帰結は、当然、カインの輩の中に鎖じ込められ[#「カインの輩の中に鎖じ込められ」に傍点]――の一句で瞭然たるものになってしまう。そして、ディグスビイはまず、この館に難問を提出し、そうしてから、その錯綜《ジグザグ》の結び目の中で、嘲笑《せせらわら》っているのだ」と検事は神経的に指を絡み合わせて、天井をふり仰いだ。「ああ、その次は、凶鐘にて人形を喚び覚せ[#「凶鐘にて人形を喚び覚せ」に傍点]――じゃないか。ねえ法水君、ディグスビイという不可解な男は、この館の東洋人どもが、ゴロゴロ地獄へ転がり込んで行く光景さえ予知していたのだよ。つまり、この事件の生因は、遠く四十年前にあったのだ。すでにあの男は、その時事件の役割を端役までも定めてい
前へ 次へ
全700ページ中476ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング