、驚くべきじゃないか。これは、ホルバインの『|死の舞踏《トーテン・タンツ》』なんだよ。しかも、もう稀覯《きこう》に等しい一五三八年|里昂《リオン》の初版なんだ」
それには、四十年後の今日に至って、黒死館に起った陰惨な死の舞踊を予言するかのように、明瞭《はっきり》とディグスビイの最終の意志が示されていた。その茶の犢《こうし》皮で装幀された表紙を開くと、裏側には、ジャンヌ・ド・ツーゼール夫人に捧げたホルバインの捧呈文《デディケーション》が記され、その次葉に、ホルバインの下図《デザイン》を木版に移したリュッツェンブルガーの、一五三〇年バーゼルにおける制作を証明する一文が載せられていた。しかし、頁《ページ》を繰《く》っていって、死神と屍骸で埋められている多くの版画を追うているうちに、法水の眼は、ふとある一点に釘付けされてしまった。その左側の頁には、大身槍《おおみのやり》を振った髑髏人《どくろじん》が、一人の騎士の胴体を芋刺《いもざ》しにしている図が描かれ、また、その右側のは、大勢の骸骨が長管喇叭《トロムパ》や角笛《ホルン》を吹き筒太鼓《ケットル・ドラム》を鳴らしたりして、勝利の乱舞に酔いし
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