ォな溜息を吐き、法水に一冊の書物を手渡した。そして、グッタリとした弱々しい声で云った。
「何もない――隠し扉《ドア》も秘密階段も揚蓋《あげぶた》もないんだ。たったこの一冊だけが収穫だったのだよ。ああ、こんなものが、十二宮秘密記法の解答だなんて」
 法水も、この衝撃からすぐに恢復することは困難だった。明らかにそれは、二重に重錘《おもし》の加わった、失望を意味するのだから。では、何故かと云うに、ディグスビイが設計者だったということから、ほとんど疑う余地のなかった秘密通路の発見に、まずまんまと失敗してしまった――それは、無論云うまでもないことである。けれども、それと同時に、事件の当初ダンネベルグ夫人が自筆で示したところの、人形の犯行という仮定を、わずかそれ一筋で繋ぎ止めていた顫音《せんおん》の所在が明白になった。それなので、いよいよ明瞭《はっきり》とここで、あのプロヴィンシヤ人の物々しい鬼影を認めなければならなくなってしまったのだ。しかし、以前の室《へや》に戻ってその一冊を開くと、法水は慄然《りつぜん》としたように身を竦《すく》めた。けれども、その眼には、まざまざと驚嘆の色が現われた。
「あ
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